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Tacomi式世界⑫「勘違い検定1級」

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 自慢じゃないが、ぼくは言葉の勘違いが激しい。自称・「勘違い検定1級」を所持している。

 

あれは中学1年生の頃。

 

英語の授業で、『桃太郎』を英語で読むという時間があった。

 

まずは本文を黙読しなさい、と先生に言われたが、冒頭の「Once upon a time」という出だしからよく分からない。なんだこれ。

 

ページの下に注釈があったのにも気付かず、いつまで経っても一向に読み進められずにイライラしていた。

 

まぁ訳すと「昔々」という意味だが、ここでぼくは勘違い力を発揮する。

 

そもそも「upon」を、「ウッポン」という、スッポンの一種だと考えていた。スッポンなら昔に出てきてもおかしくないんじゃね、という思考回路がそうさせた。

 

つまり。

 

「音痴なウッポンのタイム。おじいさんとおばあさんがいました」と、英文を黙読したぼくは頭の中で勝手にそう訳していた。

 

待て。これは一体どういう状況なんだ。

 

「ウッポンターイム! はーい、ここでタイムね。今から、音痴だけどこのおれ、ウッポンの視点でおじいさんとおばあさん、そしてこの桃太郎全体を語っていくよーん!」と語られているような気がする。勘違いだろうか。

 

てか何がウッポンタイムだよ、いきなりタイムかけんじゃねぇよ、ついていけねーよ、さっさと洗濯と柴刈りに行ってくれよと、ぼくは内心あきれていた←

 

このように、ぼくは今でこそ奇跡的にも英検2級を持っているが、当時はお話にならないレベルだった。

 

そんな、「英検」とか「漢検」とかは聞き馴染みのある言葉で、中学生の頃は何の略語かは知っていたが、一つだけ猛烈に勘違いしていた検定があった。

 

ある日、友達同士で「おまえ、すうけん受けるの?」「いやー難しそうじゃね」という会話が耳に入ってきた。

 

ちょっと待て。すうけんとは何事だ。

 

まぁ「数検」のことなのだが、思春期まっさかりの中学生というのは、妄想力が豊かである。

 

「〜けん」という以上、検定の種類だと思ったが、勘違い検定1級のぼくは「吸う検」だと勘違いしてしまった。

 

そうか! つまり、おっぱいが吸える検定か。

 

というか、正直吸いたい。よろしくお願いちまーちゅ。

 

「吸う検」という以上、やはり乳房を吸うのは分かるけど、一体どんな吸う技術が求められるのか。

 

友達に聞いてみた。

 

「吸う検ってどんな感じなの?」

 

「まぁ受ける級によるかなー。小学校で教わるレベルが詰まってるやつは6級かなー。まぁ公式覚えとけばいけると思うけど」

 

「えっ! 小学校でそんな公式教わったっけ!?」

 

「はぁ? みんなやってたじゃん」

 

「ええー! マジか! おれやった覚えないぞ!(おっぱいを吸う公式なんて)」

 

「いやあるだろ! あ、あと実際の検定では定規とか分度器とかコンパスも使うから」

 

「マ、マジで!? 痛くね?(コンパスのとがった部分で乳房に穴開けて飲むことを想像している)」

 

「はぁ? そんなの気を付けて使えばいいだろ」

 

「ま、まあね。でさ、でさ、相手ってどういう人なの? やっぱりグラビアアイドル?」

 

「はぁ? 何言ってんだ。そりゃ自分だろ。己との戦いだよ」

 

「えーっ! 自分のおっぱい吸うの!? むずくね?」

 

誤解はこの後に解けて夢は崩壊するのだが、こんな調子ですぐ勘違いしていた。

 

大学生になってからも、ひどい勘違いを発揮したことがあった。

 

「あたし今度、仏検受けるんだ〜♪ ねぇ一緒に受けない?」とLINEしてきた女友達がいた。

 

「ふつけん? どんな漢字書くの?」(もうぼくは勘違いしないぞ)

 

「ホトケって漢字に、検定の検だお!」

 

まぁフランス語検定のことなのに、ぼくは「出家して仏の道へ入る試験」と勘違いした。

 

「いやいや! 受けないよ! てか、そんな気軽に尼さんになる感じなの? 全部剃る覚悟はあるの? おれは反対だなぁ~」とLINEを返すと怒られてしまった。

 

そうそう、「最っ低…」と軽蔑された勘違いは「簿記検定(ぼきけん)」だが、この後を詳しく書いたら、もう犯罪な感じがするので、あとは読者の想像にお任せしたい。…想像しなくてもいいけど。