文豪たこのくっついて~スミはいて~

おもしろさ第一、役に立つこと第ニ

Tacomi式世界④「小学生日記 ~罪の告白~」

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屋根裏を整理していたら、ほこりを被った日記が出てきた。ぼくは小学校3年生くらいの頃、よく日記をつけていたのだ。

何を書いていたのか、正直覚えていない。ぼくはどんな子ども時代を送っていたのだろうか。新しく買った本を開くような喜びで、ページを開いてみた。

○月○日 はれ

きょうは、おかあさんから、おこづかいを500えんもらいました。じてんしゃにのって、ドラゴンボールのカードダスをやりにいきました。

カードダスは1かい100えんで5まいのカードがでてきます。なので、5かいやりました。でも、キラカードはでなかったです。カードダスがおいてあるコインランドリーのおみせのひとに、「すいません、このカードぜんぶいやだから、100えんとこうかんしてください」といったら、「んなことできるわけないでしょ!!」とおこられました。むかつく。おこづかいが0えんになったし、このうらみはいっしょうもちつづけます。

字が汚く、判読するのに苦労した。少しは漢字を使えよ! と言いたい。

というか、そもそも何というアホな日記だろうか! 誰もそんな取り引きに応じるわけがないし、お小遣いを使い果たしたのは自分のせいだろ! とツッコミたくなる。ああ、情けない。もうちょっとマシな日はないのか。次だ、次。

○月×日 くもり

きょうは、おかあさんから、おこづかいを500えんもらいました。ハイパーヨーヨーのガチャガチャがあるとがっこうできいたので、じてんしゃにのってやりにいきました。

ビスコ(注:店名)にいったら、ハイパーヨーヨーのガチャガチャじゃなくて、にせもののハイパーヨーヨーのガチャガチャしかありませんでした。みんなにだまされた。がっこうのともだちをいっしょううらみつづけます。でも、ぼくはとにかくヨーヨーがほしかったので、やりました。ヨーヨーがてにはいったので、うれしくて、かたてうんてんをしながらヨーヨーであそんでいました。

いえにかえったら、おかあさんがげんかんでまっていて、「そのヨーヨーどうしたの?」ときいてきました。ぼくは「だいがくせいのお兄ちゃんからもらった」といいました。おかあさんは、「そんなのウソ!」とすぐにいいました。ぼくは、「ほんとうだよ! ふりょうっぽいだいがくせいのひとからもらったんだよ。まだそこらへんをウロウロしているかもしれない!」といいましたが、おかあさんはぜんぜんきいてくれず、ぼくをまたビスコまでつれていきました。むかつく。

ビスコまでいって、おかあさんがおみせのひとにじじょうをはなして、「このヨーヨーと500えんをこうかんしてくれませんか?」といいました。おみせのひとは「できません」といいました。ぼくはわらったけど、おかあさんがおこってぼくのてをひっぱってビスコのそとにつれていき、500えんがどれだけだいじかをせつめいしてくれました。みんなこっちをみていてはずかしかったです。むかつく。

どうやら、ぼくは基本、「最終的には自分の罪を他人に押し付けて、一生恨み続けるというスタンス」を取っていたらしい。身勝手極まりない犯罪者だ。お世辞にも、いい子だったとは思えない。この2ページを読んだだけで、ぼくは寒気がしている。自分が嫌になる。三度目の正直で、もう次のページに希望を託すしかない。

○月△日 はれ

きょうはかていかのじゅぎょうで、おりょうりをしました。みんなでワッキーをつくりました。まっちゃをいれたワッキーかたぬきしたワッキー、チョコチップをつめたワッキーなど、いろいろなワッキーができました。そして、ぜんぶオーブンでやきます。なかには、まっくろにこげちゃったワッキーもあったけど、サクサクしてておいしかったです。ぼくは10まいくらいワッキーをたべました。

愕然とした。希望どころか絶望だ。あれはクッキーではなかったのか。

ああ、覚えていないけど、とうとうぼくは知らず知らずのうちに殺人を犯した上に、なんと食ってしまったらしい。もう時効なんだろうけど、クラスを代表してここに告白します。申し訳ございません。